TMDプリメイン・アンプ

 
小生はここ数年、TMDケーブルにどっぷり浸かっているTMDケーブル・ファンの一人です。オーディオでは主にモダン・ジャズを聴いています。TMDのケーブルの音については、一度でもその音を聴かれた方には今さら説明する必要もないと思いますが、ひと言で言えば「フツーは難しい音の解像度と温度感を高次元で両立させた稀なケーブル」であると言えるでしょう。そこから得られる「音楽的な快感」は他ブランドのケーブルとは明らかに一線を画しています。
 
TMDと言えばオーディオ・ケーブルのマニアックなメーカーというイメージがありますが、実は20年くらい前からアンプも制作しているのです。ただし、アンプもケーブルと同様すべて畑野さんの手造りなので量産はしていません。彼の造るアンプは「一点アース」にこだわったプリメイン・アンプです。これにより、セパレート・アンプでは望めない素晴らしい音像の定位感が得られるのです。このアンプで昨今有名なのが「テラシマ・モデル」です。寺島さんもこのアンプの三号機とアヴァンギャルドのスピーカーで毎日JAZZオーディオの至福の世界に浸っているようです。
 
昨年の春、畑野さんから「テラシマ・モデル」をベースとした「音質追求型」のアンプを開発中とのお話を聞き、小生はすぐにその話に飛びつきました・・・小生の「音の嗜好」で調整した「ハシモト・アンプ」を是非造ってほしいと(笑)。このアンプの肝は、23接点のロータリー・スイッチとTMD特製のオール空中直線抵抗で構成される可変ゲイン!小生は数多くのTMDケーブルを聴いてきたので、その一貫性のある音質の快感は熟知しており、畑野さんの才能とオーディオ技術には全幅の信頼を置いているので、彼の力作であるこのアンプを造ってもらうことには何の迷いもありませんでした。ちなみに、小生はマッキンの真空管セパレート・アンプやアンブローシア+アンプジラのアンプも使用しています。
 
このアンプの制作には試作機ということもあり100日くらい掛かりましたが、制作過程で進捗状況のご報告と写真も頂きました。とにかく音質最優先で「音質にプラスにならないもの」は徹底的に排除し、仕様も極めてシンプルかつストレートなものにしてもらいました・・・たとえば、入力セレクターなしの入出力一系統、スピーカー端子もシングル・ワイヤ、リモコンもいらない(笑)。コンセプト的には「シンプル・イズ・ザ・ベスト」を目指すアンプですが、実際の内部構造は、寺島さんが見たら目を回すようなフクザツ系になることが十分予想できました。
 
一応出来上がった段階での音は「上質のミネラル・ウォーターのような」、「音のアイマイさや崩れ、歪がない」、「フツーのアンプのようなテキトーさやルーズ感がない」しかし、「モニター調ではなく音の素顔が感じられる」とのことでした。「音の素顔」が感じられるピュアな音も聴いてみたかったのですが、小生の「音の嗜好」をいくつか畑野さんにお話して最終調整をやってもらいました。小生の注文とは・・・ジャズの生々しい躍動感、コクがあるのにキレがある音(笑)、鮮明で深みのある音、高域と低域を少し上げてほしい(ドンシャリ型)と言ったものなので、最後の「音決め」は大変だったようです。何とウチに届けられる前日には寺島邸に持ち込まれ、寺島さんと一緒にいろいろ調整して頂いたとのこと。これには感謝感激でした!
 
感激と言えば、このアンプの実物を見たときの感激は忘れられません。畑野さんご自身にウチまで届けて頂きました。テラシマ・モデルとまったく同じシャーシですが、奥行き60cmのその存在感が凄い!分厚い三つ目のフロント・パネルを取り付けると重量は優に30キロ以上。天板を取り外して中を覗くとこれがまた圧巻!写真で想像していたよりもはるかに大きな円筒形のデカ・コンデンサー6個(WEとマロリー社製か)、WEの電源トランス、大小様々なフクザツ系ケーブル配線。入力端子から伸びるケーブルはちゃんとシルクのジャケットをまとっている。ロータリー・スイッチの極細線46本はさすがにハンダ付けしてあるが、あとはほとんど圧着端子によるケーブル接続。何かキャラメルのようなもの(WE製か)も見える(笑)。ベーク板の下には「クモの巣」のように緻密に張り巡らされた空中直線抵抗が!まさに「手造りの塊」のようなアンプ。ケーブルと同様、パーツや線材の吟味から始まり、そのすべてに「オーディオの達人」の精魂が注ぎ込まれたアンプのまさに芸術品!
 
かなり大きな箱の中に余裕を持ってパーツが取り付けられ、配線もされているように思えるのですが、畑野さんによるとホントはもう少し大きな箱の方がいいとのこと。これは電源部と増幅部を出来るだけ離すという彼の思想によるものでしょう。事実、その後開発された「テラノザウルス」はWEの電源トランスが背面に外付けされています。これで奥行きは70cmか!アンプの背面には入力端子、プリ・パワー間のケーブル端子、大きなスピーカー・ケーブルの接続端子がシンプルに配置されています。電源ケーブルのコンセントもプリとパワー用に2個装備。アンプの内部ではプリとパワーがまったく別個の構成となっていますが、それを一点アースで合体させたところにこのプリメイン・アンプの大きな利点があり、プリ・パワー間を様々なライン・ケーブルで繋ぐことによりアンプの音決めが出来るのも大きな特徴です。
 
実は、畑野さんにこのアンプを届けて頂いたとき、さらに音の最終調整を一緒にやりました。ある部分の抵抗値を変える度に「音の質感」が面白いように変わるのは驚きでした!ここがハイハット・シンバルでここがベース、ここを変えるとコクが増えて、ここがキレといった具合で自由自在。彼はオーディオの魔術師でもあります(笑)。
 
その後、もう一年半くらいケーブルを変えたりしながらこのアンプの音を聴き続けていますが、まったく飽きることがありません。それはこのアンプの音が紛れもなくTMDケーブルの音の延長線上にあるからです。現在の音がどのような音か言葉で説明するのは難しいのですが、極めて静寂な背景のもとに各楽器の音やボーカルの声が生々しく立体的に浮かび上がり、その快感がくぅー堪らん(笑)と言ったところです。背景が静寂なのは、ノイズ・フロアのレベルがフツーのボリューム式のアンプとはまったく異なる「可変ゲインの威力」によるものと思われます。
 
「TMDのケーブルには十分満足しているけど、TMDのアンプはどうなのかな?」ともし迷われていたら、一度「テラノザウルス」の音を聴いてみてください。新装なったTMDの試聴室で聴けると思います。そうすれば、小生がウソを言っていないことも実感して頂けるはずです!オーディオの場合、「聴かず嫌い」とは本当に損なことです(笑)。

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